『ベンチャーよりも大手企業に就職して経験を積んだ方がよい』『倒産する可能性が高いので就職先として避けたほうが良い』。
岸田政権が【スタートアップ元年】を宣言してはいるものの、よく聞かれるこうした言葉があります。
『福利厚生がしっかりしている大手の方が安心できる』『ベンチャーは仕事大好きで陽キャばっかりいるイメージ』など想像も膨らむことでしょう。
果たして本当にそうなのでしょうか?
今回は、急成長中のベンチャー企業で人事領域を管掌する筆者が、あなたの考えるベンチャー企業と実態があっているのか、答え合わせをしていきたいと思います。
ベンチャー企業へ就職することにどんなメリットがあるのか、最低限知っておくべきことはなんなのかをお伝えします。
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ベンチャー企業を取り巻く環境
倒産確率が高い、という情報にはソースがない!?
【中小企業庁が公表するベンチャー企業の生存率は創業から5年後は15.0%、10年後は6.3%。20年後はなんと0.3%になる。】
ベンチャー企業が創業してから5年後の生存率はとても低い、というような情報がよく言われますが、実はその情報に明確なソースはありません。そればかりか、中小企業白書によると、開業5年後の生存率は81.7%となっており、15%という数字と明らかに乖離があることがわかります。
出所:中小企業庁「中小企業のライフサイクル」https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H29/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap1_web.pdf
こうした真偽不明の情報に踊らされ、正確な一次情報を見ずに「ベンチャー企業は倒産リスクがあり、危険だ」ということだけを信じないようにしましょう。
不安定な環境だからこそ、どこでも生きていける
ネームブランドや福利厚生だけに囚われて大手企業への就職を志望することは推奨できません。現在は日系の大手企業であっても、不正会計問題や組織的な統制の問題などで倒産に追い込まれるケースや業績悪化に伴う従業員の大量リストラも珍しくありません。
一方で、ベンチャー企業で様々な問題に自分で対処し、常に変化していく環境を生き延び続けることこそが、今後の不安定な社会を生き延びるための必要なスキルなのかもしれません。
ベンチャー企業の5つの噂と実態
若いうちから裁量権がある
ほとんどの企業では、少ない人数で大きなプロジェクトを持つことが多いため、広い業務範囲の責任を持つことになります。
しかし、裁量権は自らで広げていくものです。小さい依頼や約束事を完璧にこなすことを繰り返す。そうすることで「次のこの大きい仕事も○○さんに任せてみよう」となるわけです。「最初から裁量権だけが欲しい」「やりたいことだけをやらせて欲しい」という人はベンチャーには向いていません。
やるからには徹底的にやり切る覚悟と、それを完遂する責任感を持ち合わせていれば、どんどんチャンスはもらえる環境です。
労働時間が極めて長い
労働時間が日系大手企業と比較して長いことはベンチャーの一つの特徴と言えるでしょう。0→1を全員で作り上げるフェーズにいるため、それは自然なことですし覚悟しておかなければなりません。
少し具体的に、こう考えてみてください。
飲食店であれば「◯時になったら〜〜を掃除する」「お客様から〜〜と言われたら〜〜のように対応する」といったルールがあると思います。あなたが勤務する企業でも同様にマニュアルやルールが定まっているはずです。
では、そのルールは誰が決めたのか。
そうです、そのルールを決めていくところからスタートするのがベンチャーフェーズなのです。さまざまななケースを想定して、情報収集した後に最適解を決定していくため、時間がかかるのです。このタイミングを楽しめる人にとってはやりがいのある環境ですが、一方で労働時間が総じて長くなってしまうことも覚悟しなければなりません。
意思決定のスピード感が早い
意思決定の早さはベンチャーの最大の武器です。
なぜ意思決定のスピードが大切かというと、「一番最初にミスをすることができるから」です。一番最初にミスをするということは、何がダメだったのかを把握することができ、そしてその対策をした上で次のアクションをクオリティ高く実施することができるのです。
市場は先行者優位の原則があります。最初にマーケットを取りに行くことはとても大切なスタンスです。
起業を目指すなら就職するべき
将来的に自分で会社を起したい、と考えている方は、新卒の就職活動でベンチャー企業へ就職するべきです。理由は2点あります。
1点目は、経営陣との距離です。将来自分が経営陣になるにあたり、その先輩にあたるベンチャーの社長と近い距離で仕事をすることができる経験は、大手企業では積むことができません。壁にぶつかったときに社長は何を考えてどのように実行していくのかを勉強しましょう。
2点目は、会社としての企業活動全体を俯瞰することができるからです。
例えば日系の大手証券会社で人事部に配属されると、役割は「新卒採用担当」「中途採用担当」「採用アシスタント」「労務担当」「業務改善担当」「組織開発担当」「研修担当」などに分割されます。一方で、ベンチャー企業に一人目の人事として就職すると、やることは「採用・労務・組織開発・研修・制度整備」です。その差は一目瞭然ですね。
実力主義の環境なので結果が大事
結果を出せば評価されますし、逆に出せなければいくら年齢や社内の経験年数が長くなったとしても出世することはありません。アーリーベンチャーであれば新卒2年目で部門を率いるということも珍しくはないでしょう。
自分の頭でキャリアを考える
いかがでしたか?
今回はベンチャー企業に就職するメリットを解説しました。ここで明確にお伝えしておきたいのは、決して「ベンチャー企業のほうが大企業よりも絶対に成長できる」ということではありません。
大事なのは、あなたが将来どうなりたくて、いまどういうことをやる必要があるのか、またはやりたいのか。それをしっかり考えた上で、短期間に成長したい、将来的に起業をしたいと考えているのであればベンチャー企業へ就職するほうが良いでしょう。
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